現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大によって各方面に影響が出ていますが、まだ事態がこれほどではなかった2月15日に、人間・環境学会(MERA)第118回研究会にお招きいただき、『移動する「家族」』上映会を実施しました。この企画は、法政大学教授の岩佐明彦先生からのご提案で実現しました。
岩佐先生には、私の博士課程の研究の過程で何度もアドバイスをいただきました。私が所属していた加藤文俊研究室では、毎年年度末に研究室で取り組んださまざまなプロジェクトの成果や、学部4年生および大学院生の個人研究の成果を展示する「フィールドワーク展」という展覧会を開催していますが、岩佐先生には毎年ご来場いただき研究の進捗を見ていただいていました。
岩佐先生の研究テーマの一つは、「居住者の住みこなしに着目した災害応急仮設住宅の居住環境支援」です。先生が研究室のメンバーとともに取り組まれたプロジェクトであり、書籍化された『仮設のトリセツ』は、人びとの移動の経験を理解することをテーマにしてきた私に、「環境移行」「住みこなし」といった新たな視点を与えてくれました。今年度アーツカウンシル東京の「思考と技術と対話の学校」で、私がナビゲーターを務めた「‘Home’ in Tokyo」という講座に、岩佐先生をゲストとしてお招きし、「仮設(応急仮設住宅)は‘Home’となりうるか」「被災地における‘Home’とは?」というテーマでお話いただいたりもしました(これは後日レポートを公開予定)。そんなご縁があり、今回、人間・環境学会(MERA)の研究会で『移動する「家族」』の上映会を実施する機会をいただきました。
会場は、都営大江戸線牛込柳町駅から歩いてすぐの「みちくさくらす」という、もとクリーニング屋さんだった建物をリノベーションしてつくられた、地域の人びとの交流拠点。こじんまりとした心地よい図書室のような2階のスペースで、壁をスクリーン代わりにして上映しました。各地の大学等で研究されている13名の先生方が参加され、上映後の対話では、「研究者」としての専門的な知識だけでなく、それぞれのパーソナルな移動や家族の経験、家族観についてのお話をうかがうことができ、貴重な時間になりました。後日、報告記事がMERAのウェブサイトに掲載されると思うので、公開されたら追記します。