“Transition”, a documentary film co-directed by me and Daijiro Mizuno, has been selected for the IDFA Competition for Short Documentary of the 32nd edition of International Documentary Film Festival Amsterdam!
IDFA: https://www.idfa.nl/en/film/f8b0c22a-2ed7-4ab4-83f9-9857c83e9f3e/transition
水野大二郎先生との共同監督作品“Transition”が、国際ドキュメンタリー・フェスティバル・アムステルダム(IDFA)のコンペティション部門(ショートドキュメンタリー)に入選しました。11月にアムステルダムにて、同部門で選ばれた他の11作品とともにワールドプレミア上映されさらに審査されます。
IDFA: https://www.idfa.nl/en/film/f8b0c22a-2ed7-4ab4-83f9-9857c83e9f3e/transition
このプロジェクトは、昨年、私の博士研究が最終段階を迎えた頃に、副査として指導してくださっていた水野先生から提案いただいたことで始まりました。私は「移動」と「家族」をテーマに研究をしてきましたが、水野先生から、自分が今経験していることはまさに「移動」と「家族」をめぐるエクストリームなケースだから、新たな研究対象にしてみてはどうかというお話がありました。その時、水野先生が、妻みえさんの闘病を支えながら、当時1歳になったばかりのてらすくんの育児と、大学での仕事をなんとかして成り立たせるために奔走している状況を知りました。
自分自身が移動する、家族を移動させる、ものやメッセージなどを移動させる。困難な状況でもよりよく生きるために、みえさんの闘病が始まってからの2年間、多様な「移動(モビリティーズ)」を組み合わせる試行錯誤をしながら生き抜いてきたプロセスを、水野先生は自分のiPhoneでほぼ毎日記録し続けました。私は後半の1年間、毎週のペースで水野先生にインタビューを行い、そこでその週の日記とiPhoneで撮影された写真や動画を見せてもらい、水野先生の「生活世界」を理解することを試みました。“Transition”は、2年間の記録を、この1年間のインタビューによる理解にもとづいて編集して制作した作品です。私にとってこのドキュメンタリーは4作目ですが、自分が撮影した写真や動画をほとんど使わないで制作するのは初めてのことですし、「語り」がない作品も初めてです。調査者として自らを調査し続けた水野先生による記録が、この作品を成り立たせています。
制作の最終段階では、 加藤文俊先生にアドバイザーとして参加していただきました。加藤先生のもとで研究するようになってからずっと‘social bonding(社会的なつながり)’について考えてきましたが、その基盤は‘being part of each other’s life transitions’なのではないかと、このプロジェクトを通してあらためて実感しています。水野先生、加藤先生と、このあと、2年間の記録と向き合いながら、論文も書く予定です。
この作品が、何よりも、みえさんの最愛の存在であるてらすくんにとって5年後、10年後に意味のあるものになっていることを心から願います。
11月のアムステルダムでのワールドプレミア上映以降、日本でもいろいろなかたちで上映の機会を探ると思うのでどこかでご覧いただければ幸いです。